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小言読み物(8分)
キオクシアでタコ負け、暫定大損
はじめての株 編集部
キオクシアでタコ負け暫定大損・痛い勉強代の記録
小言これは分析記事ではなく、いち個人投資家の失敗の記録だ。少し時間が空いて、ようやく正気を取り戻しはじめたので、メモとして振り返っておきたい。同じ轍を踏む人が、一人でも減れば救われる。
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これは相場の分析でも、うまくいった自慢話でもない。ひとりのファンダ投資家が、モメンタムの熱狂に飲まれて大損するまでの記録だ。少し時間が空いて、ようやく正気を取り戻しはじめたので、忘れないうちにメモとして書き残しておく。読み物として、あるいは反面教師として、気楽に読んでほしい。

もともと、私は日本株に弱気だった

白状すると、私はもともと日本株に弱気だった。米国株ではハイテクをよくスイングし、投信でもFANG系を買っていたが、こと日本株に関しては筋金入りのファンダ投資家だった。日本株は米株に比べて市場が許すPERが低いように思え、とりわけ2024〜2025年の半導体系——右肩上がりで超高PERの銘柄には、いつ弾けるか分からない不安をずっと感じていた。

だから私の日本株ポートフォリオは、銀行や商社といった高配当銘柄が中心だった。値動きの荒い米株と、地味で堅い日本株。その二つでバランスを取っているつもりでいた。半導体に手を出すとしても、暴落時に東京エレクトロンやアドバンテストを少し拾って、リバウンドで売る——その程度の、慎重な付き合い方だった。

「靴磨きの少年」、キオクシアを買う

そんな私がキオクシア(285A)を買うにいたったのは、SNSで「フジクラショック」が騒がれていた5月中盤、決算直後のことだった。仮想通貨を思わせるような連日の大幅高に魅せられ、一躍市場の主役に躍り出たこの株を、「今こそ買うしかない」と思ってしまった。

思い返せば、この時点で私はすでに「靴磨きの少年」だった。相場の天井では、普段投資などしない靴磨きの少年までが株の話をしはじめる、という有名な逸話のあの少年だ。だが買った当初は、いつものように「20%も取れたらすぐ売ろう」と思っていたから、自分がその少年だという自覚はまるでなかった。

米株のスイングで、自分の中に「モメンタムチンパンジー」(理屈より勢いに飛びつく自分)の片鱗を感じてはいた。それでも「モメンタム株に、押し目待ちに押し目なし」という言葉をいつものように自分に言い聞かせ、1株約5万円もする値嵩株を、上場来高値で買った。生粋の順張りである。額が額なので、さすがに清水の舞台から足を滑らせたような気分がした。

清水の舞台から、昇天する

ところが、そんな素人の不安をよそに、株価はザラ場でもPTS(時間外取引)でも、あれよあれよと上がっていった。気づけば含み益は20%を超えていた。清水の舞台から、今度は昇天する思いだった。買った当初に決めた利確ラインに、3日と経たずに到達したのだ。

人間の欲望はとどまるところを知らない。一瞬、売ろうかと迷った。だが下がる気配はまるでなく、ボリンジャーバンドの上限に沿って上昇を続ける「バンドウォーク」の状態。「とりあえず7万円になってから考えよう」と、私は手放さなかった。

買ってすぐ、ファンダも調べた。ファンダ投資家として、当時の予測EPSが8,000円ほどある株が5万円ちょっとで買えるという“異常な割安”に、私はむしろ感謝した。もっとも、かなりの値嵩株であること、そして日本のハイテク株への恐怖感から、まだ買い増す気にはなれなかった。今思えば勉強不足で、この頃はNAND型メモリという事業への理解も、信頼感も薄かった。

桁が変わっていく、夢のような日々

6月に入った頃、米株の決算の影響で一瞬の調整が来た。だが運良く、日中に忙しい時期と重なり、「売る」という選択肢すら頭に浮かばなかった。結果的に、それが幸いした。一緒に買ったマイクロンやサンディスクも連日10%ほど上がる、生まれて初めて見る夢のような相場。とにかくお金が増えた。良いものを食べ、気前もよかったと思う。

見れば見るほど資産が増え、桁まで変わっていく。「こんなことなら、もっと早く買っておけばよかった」「次はいつ買い増そうか」——そればかり考えていた。朝から夕方までは東京市場、夜から朝まではニューヨーク市場を凝視して、私は幸せだった。ポートフォリオには、もう他に何もいらないとさえ思っていた。

ポートフォリオが、キオクシア一色になる

結局、株価は7万円のラインを越えて8万円に達した。勢いがまったく衰えないので、私はここで買い増した。この辺りからの記憶はふわふわして曖昧だ。6月の中盤には、日本株ポートフォリオのほぼすべてがキオクシアになっていた。

ついには、暴落で拾って以来ずっと長期で持っていた三菱HCキャピタルや三菱UFJ——ポートフォリオの損益率を華やかに支えてくれていた高配当のメンツまで処分して、その資金で285Aを買い始めた。あとから思えば、これ以上ないほど分かりやすい天井のサインだった。だが渦中にいる自分には、その自覚がまるでなかった。

10万円を超えた瞬間に、ようやく一部を売って初めて利確した。ところがその日の夜には、なぜか私はまた買いボタンを押していた。

「まだ上がる」——落ちるのも、また速い

11万円超え、そして時価総額1位になる瞬間を、私はパンパンに買い込んだ状態で見届けたかった。来季の予測EPSが13,000円なら、株価15万円も余裕だと本気で思っていた。マイクロンの超絶決算でも、また買い増した。あの決算は、落ちかけていた相場に差した一条の光であり、希望だった。

レバレッジ規制の話も、ハイパースケーラーの設備投資の資金不足の話も、当時の私には「知ったことではない」材料だった。PER的にも、メモリ市況的にも、まだまだ上がる——そう信じて疑わなかった。救えないことに、株価が落ち始めてからも、私はなぜか買い増していた。

だが現実は甘くない。モメンタムの株は、上がるのが速い分、落ち始めるのもやはり速かった。含み損に転じてから、私は何もできなくなった。久しぶりに見る緑の数字。しかも損失額が大きすぎて、どうすればいいか分からない。その間にも、お金は見る見るうちに減っていく。

動けない——含み損だけがふくらむ

移動平均線を見ては「もしかしたら反発してくれ」と、何度も祈った。もう上がらなそうなチャートが形成されつつあることは、頭では分かっている。それなのに、マイナスの額が大きすぎて、損切りの手が動かない。今年の目標がキオクシアだけで達成できそうだっただけに、なおさら現実を受け入れがたく、私は売るタイミングを逃し続けた。

7月に入ってからも、株価は無慈悲に落ち続けた。現物だけなので、この記事を書いている2026年7月22日現在も、私はほぼ持ったままだ。2026年の利益は、すべて吹き飛んだ。資産比マイナス30%。ご飯の味もしなくなり、あんなに一日じゅう眺めていた株アプリも、今では怖くてほとんど開けない。それでも「8万円まで戻るかもしれない」という一縷の望みにすがって、まだ握り続けてしまいそうだ。短期保有のつもりが、最悪の形で長期保有に変わる。初めての経験だった。

教訓——他人には、あんなに言えたのに

この痛い経験から学んだ教訓を、三つ書いておく。

一つ、他人の保有株には冷静に指摘できることが、自分が当事者になると急に言えなくなるということ。私はいつも他人のチャートを見て「なぜ損切りしないのだろう」と思っていた。今なら分かる。渦中の人間には、それができないのだ。
二つ、ポジション管理を徹底しないと、サンクコスト効果で損切りできなくなるということ。一銘柄に寄せすぎた時点で、私はもう冷静な判断力を失っていた(この心理は損切りができない理由と対策に書いたとおりだ)。
三つ、損切りラインを絶対に決めておかないと、大火傷するということ。「どうなったら降りるか」を先に決めていれば、と今さら悔やんでいる(売り時のサイン資金管理)。

それでも、一つだけ救いがある。いつも他人に対して「なぜ損切りしないのか」と思っていた私が、その気持ちを心から理解できたことだ。高すぎる勉強代だったが、私はまた一歩、人の痛みが分かる人間になった。この失敗が、テーマ株の熱狂(2026年に盛り上がったセクター)や、バブルの「靴磨きの少年」の話と、地続きだったのだと、今ならよく分かる。

この記事は筆者個人の体験を綴った読み物であり、特定の銘柄の売買を推奨・非推奨するものではない。登場する銘柄や数字は当時の記憶にもとづくもので、正確性を保証しない。もし相場の損失が食事や睡眠など日常生活に影響しているなら、いったん相場から距離を置き、信頼できる人に話すことをおすすめしたい。お金は取り戻せても、心身は替えがきかない。
※本記事は情報提供を目的とした一般的な解説であり、特定の銘柄・商品の売買や投資判断を推奨するものではありません。記載の制度・数値(NISA、還元率など)は変更されることがあります。投資はご自身の判断と責任で行ってください。
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